9月28日(土)から「土の声を聴く from瀬戸」始まりました。
今回の展示は、瀬戸で採れる世界一良質ともいわれる、やきものの土「蛙目」のことをもっと多くの方に知っていただきたいと、様々な方にお話を聞き、見聞きした内容をできるだけそのままに発表したものです。
展示をより楽しんでいただく参考になればと、こちらでは蛙目のこと、そして、展示内容について、ご紹介させていただきます。
やきものの原点「土」に出会う
会場入口は、原土が並んでいるコーナーです。
こちらには、コンセプト文をはじめ、どのようにやきものに適した「土」が生まれたのか? が解説されています。
置かれているのは、「愛知県陶磁器工業協同組合」のみなさんが山から採った状態の原土たち。瀬戸で粘土としてよく使われている、蛙目(がいろめ)、木節(きぶし)、白土、黄土などです。
これらの土は、地球の営みのなかで何百万年という月日をかけて、地中深くのマグマが冷えてできた深成岩が、やがて花崗岩となり、粘土化したものです。
瀬戸で採れる土は、かつて琵琶湖の6倍ともいわれる「東海湖」といわれる湖があった場所から採れるもの。湖があったおかげで、花崗岩が海に流れ出すこともなくとどまり、粘土層へ。その後、湖がなくなり、熟成したという様々な条件が奇跡的に出来上がった、というとてもとても貴重な天然資源です。
やきものにとって、最良の土「蛙目」
そのなかでも、ぜひ注目いただきたい土が、世界中でこの地域でしか採れない「蛙目」です。蛙目には、石英(せきえい)、キラと呼ばれる不純物、粘土分の混合物が含まれており、雨が降ると、石英が光ってカエルの目のように見えたことから、その名がつけられています。
なぜ、蛙目がやきものに適しているのか?
それは、形状記憶合金のように形をとどめる可塑性(かそせい)を持つことが大きな特徴で、ろくろがとてもひきやすい。焼くと真っ白になり、しかも、耐火性が強い。精製して粘土分を、長石や珪石などと混ぜれば、磁器用の粘土までつくれてしまう。
まさに、やきもののために生まれてきたような土なのです。その土のおかげで、瀬戸では千年以上にも渡って、やきものが続けてこられたのです。けれども、蛙目は、山から掘っている天然資源であり、掘れば、なくなっていきます。
そのことを多くの方に、もう少し知ってもらえたら。それがこの展示出発の原点でもあります。
原土から粘土というプロダクトへ
次に見ていただきたいのは、展示正面の奥。原土から粘土になる流れを伝えています。ここには窯業原料を扱うみなさんがつくる“商品”としての砂や粘土が並んでいます。
「陣屋丸仙窯業原料」は、1950年に創業した、ガラスの原料となる珪砂(砂)と粘土の製造・販売をする原料加工会社。
瀬戸は、実はガラスの原料となる珪砂を日本一出荷しています。先ほどご紹介した、堆積した粘土層の中には珪砂も多く含まれています。同じ鉱山であっても層によって、土も珪砂も採れるのです。
「陣屋丸仙窯業原料」の工場では、鉱山で採掘される“原砂(原土と同じだけれども、珪砂を中心とした呼び名)”に含まれている、鉱物や砂、石、木くずなどの不要な物をとりのぞき、砂と粘土に分けて、粒子を整えて精製する「水簸」した珪砂や粘土を製造しています。
それらの粒子が整った砂を見てみると、海外のリゾート地のようなさらさらと砂であったり、日本の海水浴場のように少し大きめの粒度の砂があったり、見ていて面白いと思います。これらも商品なのです。
続いてご紹介しているのは「加仙鉱山」。大正時代初期に、陶芸家の加藤華仙さんが現在の鉱山を購入。1956年に工場を建設して以降、「水簸蛙目粘土」(すいひがいろめ)の製造・販売をされています。
展示しているのは、蛙目の原土から、粘土分を抽出した蛙目粘土。こちらのコーナーでは、どうやって、原土から粘土ができているのか流れがわかりやすくパネルでまとめられているので、ぜひご覧くださいね。
さらにお隣は、明治7年に初代・加藤石兵衛さんが磁器のうつわを製造する「丸石製陶所」から出発したという「丸石窯業原料」。
瀬戸産の蛙目・木節をベースに、様々な原料をブレンドして、およそ10種類の粘土などを販売されています。瀬戸のツクリテたちから絶大な信頼を得ています。
山から掘ったままの状態の原土は、到底使いやすいとは言えないもの。長石や珪石などを調合したり、ツクリテの求める品質を安定的に供給するため、海外からの原料も調達し、粘土というプロダクトを世の中に届けています。
粘土をブレンドして、つくる。その過程のパネルもあるので、ぜひ見ていただきたいです。
こちらの壁沿いには、ちょっとしたコラムもご用意しました。瀬戸の空気感が伝わったらうれしいです。
ツクリテの粘土レシピ公開
展示会場、中央のコーナーは瀬戸焼のツクリテたちが、ふだん使っている土をレシピとともにご紹介させていただいています。
窯元さんごとに、本当に様々な粘土を仕入れたり、あるいは、原土からつくったりして、作品を届けていらっしゃいます。商品を眺めているときは、ついつい絵付けなどに目がいきやすいですが、本焼成に入る前の素地の状態を展示しています。
ウェブ記事では、特別に商品も合わせてお伝えしますね。
【眞窯】
【双寿園】
【作助窯】
【美山陶房】
【瀬戸本業窯】
展示では、土に特化して、どんな土を使い、どのようなこだわりを持っているかなどもご紹介させていただいています。ふだんはなかなかご紹介されることのない詳細な内容で、やきもののを知らない方も、やきものをお仕事にされている方も、きっと楽しんでいただける内容だと思います。
週末は在廊予定です。ポップアップショップも開催しておりますので、よかったら遊びにきてくださいね。
「 土の声を聴く from 瀬戸」
日程:9/28(土)〜10/20(日)
時間:10時〜20時
会場:無印良品 名古屋名鉄百貨店 Open MUJI
住所:〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅1-2-4 名鉄百貨店メンズ館6階 名鉄百貨店本店
POPUP SHOP
9月28日(土)29日(日)10月6日(日)12日(土)13日(日)19日(土)20日(日)11時-16時
※10/5(土)は大変恐縮ですがお休みさせていただいています。